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北條民雄『間木老人』

間木ってなんだろう

 

一目見て、間木というのが人名だと理解できなかった私は当初、間木(かんぼく)と読んでおりました。間木(まぎ)老人は、登場人物の名前で、ふいに主人公を呼び止めるところから話が展開していきます。

 

間木というからには、木に関わるなにかがあるのか、世界には皮膚表面のイボが異常に成長して手足が樹皮のように硬くなってしまうツリーマン症というものがあるというし、この老人もそうなのか? ですとか、もっとファンタジーな世界観なのだろうか、例えば、ヒエロニムス・ボスの描いた『快楽の園』に出てくる白い樹木(右側)のような人間、ああいったのが当たり前にいる世界観なのかな? あとは間木というと和室(中世貴族の大邸宅)にある鴨居や長押を補強するための板のことだよなぁ……などと思考を巡らし開いてみたのですが、いずれもハズレ。

 

北條民雄の癩病小説という基本は変わらず、ハンセン病の隔離施設にいながら、同時に精神症状のある人間を抑え込むための特殊病棟中の特殊病棟からやってくる、とても精神異常者とは思えない老人と、その老人に親しみを感じつつもハンセン病で腐り落ち、また発狂するかもしれないという現実に恐怖して生きる主人公の交流を描く作品でした。

 

狂わずにいられることがしあわせなのか。「それでも、死はやってくる」とは司馬遼太郎の言葉ですが、その死が常人よりはるかに強く意識されるなかで、一体、なにが人を支えるか。考える機会となりました。

 

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