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書評『「社長、5万円だけ予算をください」』

5万円でできることはたかが知れているけれど

 

この本は、旧実家跡にある会社事務所に置いてきたと思っていたのですが、徳島事務所から再び引っ越そうと前回の引っ越しのまま放置状態だった本の箱を荷ほどきして飛び出してきたもので、これもなにかの縁とばかりに書評を書いてみたいと思います。

 

本書は不動産屋の社長さんが書かれた、書籍とブックレットの間くらい、厚さ1cm少々の本で、とても簡単に読み終えることができます。しかし、とても素朴でありながら、そういう基本的なことが実は大切なんだよなぁと思わせてくれる一冊です。

 

仕事が好きなら、早く出社するのも厭わない

 

近年、働き方改革が叫ばれて久しいですが、どうしてこんなにも勤務時間にうるさくなったのか。それは、やりたくもない仕事相手に、いつまでも長時間働かされているからです。私は4日徹夜して2時間睡眠、退社から5時間後には会社で仕事している……といった働き方で体を壊し、いまだ元に戻らない人間ですから、長時間労働に対して常識の範囲を超えるほどに「恨み」を持っています。それでも好きだったら割とこうして勤められてしまうんですね。限度の問題はありますが、長時間労働で疲弊するのは、「好きでもない仕事に就く人がいる」「それが普通だと思っている」という日本人の仕事観、常識、構造的な問題という部分もあるのではないかと思います。

 

好きでもない仕事のために身を粉にしてどうしますか。それだけは絶対に反対です。でも、好きな仕事のためなら、早朝出社、深夜退勤だって苦にならないものです。そういう状態でもない限り、桁外れの成果なんて出ませんし、本書のいうところの「スター社員」にだってなれやしません。繰り返しになりますが、限度はあります。一方で、好きでもなんでもない仕事を得て、9時5時の完全週休2日になったところで、仕事に生きがいや働きがい、成果なんてものを出すこともできないわけです。だとしたら、私なんかは朝起きて家に帰るまでの間、死んでいるのと同じだと思うわけです。明らかな無駄な時間だと思いませんか? 糊口を凌ぐために嫌々働くだなんて、ケチな根性を見せるくらいなら、やりたいことを仕事にすればいいわけです。毎日10時間、興味もない出社と勤務に奪われる人生は、余暇活動をどんなに豪勢にしたところで充実したものにならないと思いませんか。

 

私はこの本で、社員は全員、社長候補の「スター社員」を目指せという考え方を、上記のように解釈しました。好きな仕事、好きな職種、勤務時間も余暇時間の別もない、全人格・全人生を賭ける。それこそが充実した人間だろうと。

 

こういわれて、仕事に人生を賭けるなんてと思ったなら、それは働き方が間違っているのかもしれません。かつての私もそう思っていましたが、人生を賭けるに値するものを仕事にする。まったく逆の発想を持つことで、仕事が人生のすべてになるという考え方が受け入れられるようになるわけです。真の働き方改革は、こういうことなのかもしれません。

 

 

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