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社内でルールや制度が浸透しない理由

風土が先、制度は後。

 

多くの経営者は、制度をつくれば社員は守ってくれると考えています。とにかく優秀な社員を採って、それから制度に当てはめようとするのもその一環といえるでしょう。ですが、優秀な人ほどそういった制度に反発します。ルールに素直におさまる人間は、能力の高低と無関係に「いない」と思っておいたほうが安全です。

 

ルールがあれば安心だろうか

 

日本にはたくさんのルールがあります。例えば飲酒運転は禁止ですが、いまだにしている人はいます。ルールがあっても守らないのです。ルールさえあればどうにかなると思うのは浅はかです。まず、どうにもなりません。でも、日本は比較的治安のいい国です。これはなぜでしょうか。世界中に法治国家はあります。でも、日本は特に治安がいい。それは、「風土」にあると私は考えます。つまり、国民性です。

 

社内の制度でも同じです。「育休」の取得をしなさい、「残業」は減らしなさい。どんなに制度化、ルール化しても守られないのは、国民性(社員性)、すなわち風土がそうなっているからです。

 

困ったことがあると、すぐに制度化したり、法制化するのですが、それは元のデータはそのままで印刷した紙を修正するようなもので、次に印刷する際にはまたもや修正が必要になります。私たちが変えるべきは、結果ではなく、そこにいたるまでの原因です。こういわれてみると当たり前なのですが、これが「社内制度」というミクロの世界にやってくると、とたんに忘れてしまうのです。

 

ルールや制度は「後」でも十分間に合います。先に着手すべきは、風土の醸成です。また、自社風土にあった人間だけを採用するといった方法です。社員規模が100人、200人となれば多様性を認めるということもアリですが、30人以下ならそんなことをいっている場合ではないはずです。仮に価値観がバラバラであることが会社に資する場合でも、そういう風土を決定し、風土にあった人を採用することです。厳格な制度を求め、それ以外許せないという人間を、多様性の名の下に採ったりしないよう、注意が必要ですね。

 

タダ乗り、不正利用をどうするか

 

制度の抜け道は必ずあります。ですから、悩んでも仕方がありません。六法全書だって、そこに空いている穴はたくさんあるのです。それを解消するために、個別・場当たり的に裁判所が判断することでかろうじて法治国家が成立しているのですから、法曹界のスーパーエリートでもない私たちが考えた制度など、悪用してくださいといっているようなものです。

 

だからこそ、風土が必要だということです。

例えば、大声を出すということを考えてみます。大声を出すことは迷惑ですが、時と場所によりますよね。誰もいない海に向かって「バカヤロー!」と叫んだり、スポーツチームの応援席なら大声を張り上げてもOKでしょう。一方、クラシックのコンサート会場だとどうでしょう。これはおそらく許されません。そういう風土があるからです。

 

ただ、勘違いしてはいけないのは、風土という顔の見えないルールでがんじがらめにしなさいといっているのではないということです。結局縛り付けるために風土をつくるのでは、残業せずに上司より先に帰れない、男が育休なんて取れないと状態は変わりません。風土というのは、制度と結び付けられているべきもので、制度というのは、どうしてそんな制度があるのか「目的」と結び付けられているべきものなのです。

 

コンサート会場で叫ぶのは、多くの人の「目的」であるコンサートを鑑賞することを妨げるからダメなのです。誰もいない海で叫ぶのは、風土と制度を支える「目的」がありません。強いて挙げるなら、ムシャクシャしている自分の感情を吐露すること。そしてその目的を達しても問題が出ないからこそ許されるのです。

 

こうした事情を理解できれば、「目的」の共有が風土づくりに役立つことが見えてきます。

「飲みニケーション補助金」を出しているある会社は、その悪用に頭を悩ませていましたが、「目的」を共有することで相当改善されたと聞いています。どうして「飲みニケーション補助金」という制度があるのかを明確にして、全社員に唱和させたのです。

 

飲みニケーション補助金は社員同士の交流を深め、仕事場以外の環境で仕事について考えて、新しいことを思いついて欲しいから。そこからみんなの給料を増やしたいから、無駄になるかもと思いながらも出している。本当に無駄になるなら、悪用するなら辞める。

 

こういったことを宣言したんですね。すると、パラパラと「悪い船頭」に同調して利用していた社員が使わないようになりました。一方で、どうしても飲みたい人は、制度を維持して欲しいがために前もって企画を用意し、会議をした風を装って活用しました。厳密にはアウトですけど、社員が頭を「不純な動機でも、結果的にいいこと」に使う習慣ができたので、成果としては悪くなかったようです。

 

ここで、「飲みニケーション補助金」を悪用するな、細則はこうだ、附則はこうだ、枝の部分もちゃんと読め……とやっていくと、これだけで六法全書並みのルールブックになります。……すでに述べましたように、法律は最終的に裁判官が判断します。六法全書も全書といっているのに、細かいことは書いてないのです。細かいことは書かなくてもいいようにするのが、経営者の腕の見せ所。そのために活用すべきものが風土なんですね。

 

最後にもう一度。

風土が先、制度が後です。

大変ですが、一歩ずつやってまいりましょう。

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