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新鮮な魚が魅力です!という罠

日本は四方を海に囲まれていますので……

我が町の魚が一番!という思い込み

 

日本で一番魚が美味しいところはどこでしょう。北海道でしょうか。青森のマグロでしょうか。高知のカツオ? 千葉の銚子は水揚げが圧倒的ですが、静岡の焼津も水揚げは負けていません。特に桜えびが美味しいですよね。

 

盛り上げておいてなんですが、ここでみなさんをしらけさせる話をします。

美味しい魚介類が集まるのは東京です。

豊洲ですね。

東京からわざわざくるお金があれば、市場のそばのお店で豪遊したほうが、安くていい。なんてこともあるんです。

 

観光客を呼ぶということは、東京というブランドがある大都会の、ナンバーワンのひしめき合う連中と競いあうということです。

 

こんな夢のない話をすると、すぐに「消え失せろ」って顔をされるのですが、そこを無視して地域振興策を練るのは危険です。スタート時点から目的地を間違っているわけですから、お金や時間や人的資本を無駄遣いすることになりかねないからです。

 

その地域の魅力は東京を上回っているか?

 

私は大学で地理学を学び、巡検といって様々な地方の町を歩いて祭礼や建築様式、産業などを体験してきました。八丈島に行けば開墾作業を手伝って、牛の世話をし、隠岐の島に行っては製塩業を調査して牛の世話を……なんか牛の世話ばっかりしてますね。

 

そんなわけで、いろんな地域を見てきました。地元の人が客人をもてなそうと地元の特産品を出してくださるのですが、八丈のウミガメ。これはちょっと……でした。ウミガメ保護をしている徳島県南部の出身というだけでなく、口に入れると、カメの香りがふんだんにするんですね。学校の水槽で飼っているカメの香りです。沼地で甲羅干ししているアレです。でも、これが観光資源だと信じてやまないんです。

 

一方で、隠岐の島ではアジを釣って民宿で出してもらいました。これが人生で一番美味しい魚だったかもしれません。オキアミをつけて釣るだけですから、これっぽっちも難しくなく、日常的に食べられる食事なんですが、ややもすると下魚とされるアジの刺身が一番美味しかったんです。

 

地元の人からすると、そんなもので観光客が……と思われるでしょうが、むしろ逆です。付加価値の低い下魚だからこそ、利幅が小さく都会では味わえない。鮮度の維持方法が確立されても、いま目の前の海で、船にも乗らずに釣ってきた魚に勝てるはずがないんです。同様に、八丈島では農業用の鴨を捌いてくれました。頭を飛ばして、庭の物干しに吊って血抜きをするんですけど、都会育ちの生徒は食べられませんでしたが、田舎者の私は平気。イノシシだって血抜きで吊ってあったりしますから。そんなわけで、この鴨が抜群に美味しかったんですよね。

 

鴨なんて八丈のものでもなんでもないのに、観光資源になんて……といわれますが、さにあらず。観光客はその土地でしか食べられないものを求めているように思われがちですが、本質的には美味しいものを求めているのです。観光振興を考えると、ついつい「オラが村の特産品」を想像しがちですが、特産品になるのは、そもそも「美味しかったから」なんです。人工的に特産品をつくって売るというのではダメだということです。そりゃあ、美味しければいいんですけど、補助金が出るし、とりあえずB級グルメとやらをつくっておくか……なんてのではいけないんです。

 

美味しいものがあるから人気になり、観光客が増えたのであって、特産品があるから観光客が増えたのではないということです。

 

登山がブームですが、日本近代登山の発祥の地は六甲山だといわれます(諸説あり)。もちろん、大昔から山は登られていますけれども、発祥の地だからといって富士山よりたくさん人が登るかといえば、そうはいきませんよね。歴史的な事実や史跡、偉人の銅像がどんなに立ち並んでいても、「日本一高い」には勝てません。わかりやすさには勝てないのです。

 

また、日本のサーフィン発祥の地というものもありますが、みなさんはどこだと思われます? 沖縄? 湘南・茅ヶ崎? 残念です。山形県なんです。山形は庄内地方が、日本の波乗り発祥の地。もちろん、アメリカ式のサーフボードは戦後神奈川で駐留していた米軍がはじめたのでしょうが、記述として最古のサーフィンは山形です。

 

では、これは観光資源になるでしょうか。おそらく厳しい。なぜなら、どんなに歴史的価値があっても、サーファーが求めているのは「いい波」と「いい風景」(と「いいムード」)だからです。日本海側で波乗りするのと、太平洋を臨んでするの、どちらがいいかといえば……。波の質からいっても山形県は厳しいでしょう。

 

「美味しい」にはわかりやすさがあります。「楽しい」にもわかりやすさがあります。「一番高い」もそうですね。人が求めているのは、そういった本質に迫るわかりやすい価値です。

 

地域振興、地方創生を考えるのであれば、わかりやすく、本質に迫った価値を見せることです。

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