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生涯投資家(村上世彰)|書評

正義のヒーロー、日本を敵にまわす

頭脳は大人、態度は子ども

 

とてつもなく頭のいい人というものには二種類いて、ひとつはどこの叙事詩から抜け出してきたのだというような聖人。もうひとつは村上氏のような「答えを即答する人 or させようとする人」です。

 

多くの場合、「この現状は問題なので、こうしたほうがいいですよ」という提案は受け入れられません。人間というものは「指摘」を受けると敵か味方かという軸で判断するようになり、現状や自身を否定するものは、すべからく敵とみなされるからです。

 

先日読んだ「来場者4倍のV字回復! サンリオピューロランドの人づくり(AA)」では、「お試し」「期間限定」といって現場を変えるためにやりたいことをやらせてもらう方法が紹介されていましたが、いきなり「お前間違ってるぞ」といわれれば、やっぱり意固地になるものなんですよね。私のような中身の詰まってないバカは特に……。

 

頭がいい人のなかには、単刀直入に答えを出すことを求めすぎて、手順をないがしろにする人が多いのですね。もっとも私のようにアホンダラのパープリンでも、せっかちすぎて敵をたくさんつくる人間はいるのですが。

 

頭がいいのにこうして失敗する人をみていると、ひとえに「ツーといえばカーとなる」と思っているからなんだと感じます。全部説明しようとすると、何十時間もかかる。だから、かいつまんで説明するか、それすらせずに「これが答えです。このとおりにしないと損です」とやってしまうんですね。相手はその答えを聞いて、そこにいたる判断材料を類推して理解できるものなり、と思っているわけです。

 

でも、そんなことってないんです。

惚れた腫れたをやってきた夫婦でもできないことです。どこの誰かも知らない、ましてや大量の金で自社の株式を買い、土足で乗り込んでくる他人がいうことを、快く受け入れ、十分に類推、理解し、納得できる経営者なんてそうはいないのです。

 

そもそも、経営者というものは、誰かに頭を押さえつけられたくないからやるものです。それが……このやり方では。改革に及び腰で、逃げ切りばかり考える日本の経営陣の保身癖の問題もありますが、やはり村上氏は頭がよすぎたんです。

 

同じことがホリエモンにもいえるでしょう。両方とも、頭がよすぎるのです。そこにいたるまでの過程や、私のようなバカのことがわからない。

 

もっとも、バカは経営者から退くべきなんですけどね。でも、そんなことをいわれたら、経営者は意地でも敵対し、会社を倒産させてでも村上氏の投資を無駄にしてやる! ってなっちゃうはずなんですよ。

 

村上氏もホリエモンも、正義のヒーローです。やろうとしていることに間違いはない。

例えとして適当かどうかわかりませんが、遊園地にあるような巨大な迷路を、「入口から出口までウロウロするのなんて無駄だから、空を飛んでいけばいいじゃん」といっているようなものです。得られる結果は同じ「出口にたどり着く」なんですけど、それは普通の人には受け入れられない。「そういうルールでやってないんだ」といわれておしまいなんです。

 

多くの企業にはブレーキ役や折衝役がいます。彼らは頭がよすぎる経営者の言葉を翻訳し、時間をかけて相手に理解してもらうためにいるのですが、そういった人材が村上氏の周辺にもう少しいれば。このような結果にはならなかったのかもしれません。

 

氏のやり方は感心しませんが、氏のやりたいことには賛成します。あらためてそう思えるような本でした。

 

さいごになりましたが、一連の国策捜査ともいうべき取り調べのなかで、娘さんが死産なさったこと。言葉にできずにおります。ご冥福をお祈りいたします。

 

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