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リスクと不確実性に備えることは損?!

経営判断のジレンマ

一番楽でほめられるのは、なにもしないこと

 

経営の世界は瞬間瞬間ごとに判断を求められる世界です。

そして、その判断のなかには「将来のリスク」と「不確実性」への備えがあります。ここでいうリスクというのは、どれくらいの確率で起きて、そのときの被害がどれくらいかある程度算定できるものです。例えば、「手術の成功率は5割です」といわれるようなとき。成功しなければ死ぬので被害は甚大ですが、手術をしなくても死ぬのであれば、やらない手はありません。

 

また、不確実性についてですが、これは宇宙人が攻めてくるですとか、これがあまりにオカルトチックなら、隕石が降ってきて世界が終わる、謎の病原菌が発生して人間がバタバタ死ぬ、などです。「ゼロではないが、起こるかどうか算定できないほど低いもの」がこれにあたります。もっとも、新型コロナがあったいま、最後のものは卑近な例となってしまいましたが。

 

さて、このリスクと不確実性。どちらにも備える必要があるとは思いますが、リスクはもちろん、不確実性なんて確率も算定できないものに備えることは、世間一般に「無駄」だといわれます。それどころか、アメリカなどはリスクに備えることも消極的です。日本は国民皆保険で重税のように社会保険料を徴収されますが、アメリカはそうではありません。病気のリスクには各々が備えなさいという考えです。ですから、経済がよくまわり、投資が一般的なのです。リスクに備えるという防御を無視して、投資で稼ぐという攻撃に力を注いでいるからです。

 

平時であれば、リスク(と不確実性)に備えるコストは無駄です。しかし、ひとたび問題が発生したとき、備えていないことは大きな批判を受けることになる。これは経営者でも政治家でもなんでも同じですね。どうして準備していなかったんだ、少し考えればわかることだろうと怒られるのです。ではなぜ、社会のトップは十分に備えないのか。それは、備えるコストが無駄になるというのと、もうひとつ理由があるのです。

 

無能なトップを産む土壌

 

先ほどの手術の例を見てください。

医師はきっと一生懸命手術を行ってくれるはずです。あなたの命を救おうと最善を尽くす。しかし、結果としてあなたは亡くなってしまう。そのとき、遺族は医師を責めないでしょうか? 遺族は納得しても、メディアや周囲の人たちが、「ヤブ医者」「医療ミス」と責め立てたりしないでしょうか。

 

これが問題なのです。経営者はここでいう医師にあたります。手術(改革や新規事業)をやらなければ患者(会社)は死ぬ可能性が極めて高い。当たり前です。何十年も同じ業態、同じ仕事法で生きていけるほど世の中は甘くない。建設業でいえば、いまだに土に穴を掘って、木の柱を建てる竪穴式住居や高床式住居で食える建設屋なんてそうはいないのです。常に建材や工法は変わり、デザインの流行も設備も入れ替わる。常に準備し、変わっていかなければ、いずれ「会社が亡くなる」のです。

 

しかし、平時の社会(従業員)は変化を望まず、先ほどのようにリスクに備えるコストは無駄だとして、社員教育に金を使うくらいなら給料を上げろ、新規事業に投資するくらいならボーナスを増やせというわけです。その結果、リスクが顕在化して会社がメチャメチャになっても、彼らはその責任を負いません。どうして備えなかったんだというだけです。

 

だからこそ、トップはなにもしないのです。戦略的無能といってもいいかもしれません。リスクに備えると無駄だと批判されて損をする。それでも「会社の死」を見過ごすわけにはいかず、良心の呵責からリスクに備え、その結果としてリスクを回避したとしても誰も誉めてくれない。「元々起きなかったのではないか?」といわれておしまいです。当然、リスクが発生すれば針の筵です。これは準備していても、しなくても同様に叩かれる。

 

だとしたら、後は野となれ山となれと思いませんでしょうか?

あなただったらどうしますか?

こうして、社会は常に戦略的無能を選択しがちになるわけです。

 

本当にこれでいいのでしょうか。私はこういう土壌こそがリスクだと感じています。社長が変なことをいいだした、変えるぞと一人必死になっている、それを見て、誰一人として動かない。社員がリスクを理解していない。

社長は戦略的無能でいようと思わない、克己の人なのかもしれません。このリスクへの感度はとても大切なことです。社長は社内でトップクラスにそのことを理解しているはずです。もしみなさんが社員の立場であるならば、できる限り社長の「焦り」に寄り添ってあげて欲しいと思います。

経営者は会社の責任をとる人です。ですから、リスクを誰よりも恐れます。不安な経営陣に寄り添えてこそ、リスクに備えられる強い組織といえるはずです。

社長は一体、なにに怯えているのか。それだけでもいいので感じ取っていただければと存じます。

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