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星野リゾートの事件簿

すばらしいホスピタリティなれど

これを全商売に当てはめられても困るかもしれませんが

 

突然ですが、私は旅行が「嫌い」です。自宅の寝床にいることが一番のしあわせだからです。ですので、まずは変わり者の与太話だとしてお聞きください。

 

星野リゾートといえば、ご存知のように宿泊施設の再生・運営を手がける企業です。そのお客様を思う姿勢は、高いホスピタリティ、つまりはおもてなし精神を有する日本の宿泊施設と比しても群を抜くと聞きます。本書はそんな星野リゾートの社風と、バブル後のリゾート統廃合時代に宿泊施設再生を行う現場の話がふんだんに盛り込まれており、星野リゾートの社員がいかに自律的に動き、現場を改善していったかが見て取れます。

 

例えばここに、いつも同じメニューを頼む常連客がいるとします。そのお客さんは決まって水割りのお酒と天ぷらを頼むのですが、水割りを飲み終わるころに天ぷらが出てくるのが好みなのだそうです。これにあわせていくのが星野リゾートのおもてなしです。確かに、すばらしい。客商売とは、ぜひこうあるべきだと思います。かつて、客商売の極意として語られたものとして、百貨店の鉄則があります。「客の財布だけでなく、タンスの中身も知っておけ」といったものです。バリエーションはありますが、だいたい、相手のことをすべて把握、理解するように務めなさいというわけですね。バブル景気がやってきて、いつの間にやら金を稼ぐためだけのアコギなスローガンに成り代わってしまいましたが、元は「おもてなし」という日本的美徳なんですね。

 

突然話題が転換しますけれども、ここで冒頭の「旅行が嫌い」ってはなしが出てくるわけです。理由としては自宅が一番だからなんですが、どうして自宅が一番だと思うのか。それは旅行先のホテルや宿に行くと、決まって横暴な客、乱痴気騒ぎをする客、ハメを外している人間が目につくからです。そんなものを見てまで、お金を出してよその布団で寝たくないのです。例えば、60、70才にもなって、従業員に対して「おい、新聞だ!」などと怒鳴りつける男性客。こういうのを見ただけですべて台無しに感じるんですよね。超高級ホテルというものは経験がないのでわかりませんが、一般的なホテルから、ベッドしかないようなビジネス・シティホテルまで、どこにでもいます。やたらと従業員に横柄な態度をとる人間が。

 

星野リゾートさんはこの経営方針でいいんです。それは責めるようなことではありません。ただ、「そこまでのお代は、いただいてませんけど」というような状況でも、神様のように扱えと思っている日本人の多さ、それに従ってしまう従業員の多さを見ると、旅行なんてこなきゃよかったと毎度思うんですよね。日本は「おもてなし」の国といいますが、「過剰要求の国」なんじゃないか。

こんな言葉はないでしょうが、日本は「おもてなされの国」なんじゃあないかと感じるのです。

 

まとめ

 

本書は日経トップリーダーの編集部による聞き書きで、星野リゾートが再生に携わった多くのホテル、旅館、「よなよなエール」で知られるビール会社の話題まで扱います。そこには星野社長の美意識、行動規範、会社のホスピタリティ重視の姿勢という共通項が見て取れます。現場の人間の苦悩、怒り、抵抗と、そこからの再生を、小説チックにならず、また単なるレポート調に終わらせることもなく、まとめられております。星野リゾートという単語にピンときた方にはおすすめできる一冊です。

 

大蛇足

 

「おい、新聞だ!」といわれたら、新聞を持参して1000円チップを要求すればいいんですよ。

学校でありませんでしたか? 「先生はトイレじゃありません」 ってやりとり。

「おい」でも「新聞」でもない。従業員にだって、それくらいいう権利ってものがあるんじゃないのかなあ。

 

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