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どうにも難しい現代の事業継承

現代の事業継承に時代の断絶が影を落とす

 

事業継承の難しさは、後継者不足、責任を取りたくない若者、お金よりヒマという価値観など、様々な問題があり、また税金対策がどうのという話もありますが、今回は現代の事業継承はかつてないほど難しいという話をさせていただきます。

 

まず、かつての事業継承は同じ数直線上、歴史上に存在していたということです。木材問屋や米問屋、大工の棟梁にいたるまで、商うものは同じもの。技術が多少変わるだけ。経営方針は同じで、親子ともに育った文化も大差ないものでした。

 

たとえそれが流行が変化しやすい呉服問屋で、江戸から明治、太平洋戦争前後の断絶期であったとしても、そこの若旦那は服を商うという一点で乗り切ることができたのです。そこに経営理論の大きな差、個々人の文化の差が乏しかったから、もしくは復興・成長期で時代の断絶を無視できる社会状況だったからです。

 

ところが現代は違います。いま50〜70代くらいの創業者が事業継承を考えたとき、創業者は高度経済成長、バブル景気の「売上が立てばどうにかなる」という価値観で育った拡大路線で、事業を継承する側である30〜40代の世代は「売上より利益」という現実主義です。

 

株式やポストは今日にでも引き継げますが、社長のノウハウ、帝王学のようなものは一朝一夕では継承できませんし、その帝王学とやらはもはや時代にそぐわない。ここに軋轢が生まれ、現実主義的に責任を取りたくない若い世代の風潮もあいまって、事業継承で社内が混乱、家族間継承の場合は血縁者の間も悪くなるわけです。

 

事業継承の前に考えるべきは、社長とは一体なにか、ということです。

社長は会社の全責を負う者です。継承後にあなたが会長職に残る場合でも(お馴染みさんのためにも名誉職として残るべきです)、その責任のすべては継承した人間が負う。経営判断をすべて任せられないならば、事業を継承してはいけません。

 

家族ならばわかっているだろうとか、これだけ長くやってきたのだからなどというのは甘えです。人間は自分の知っていることは相手も知っていると思うものですが、「愛の言葉」と同じで、口に出して確認しなければまったく伝わらないし、確実にはならないのです。

 

少し前の話題に戻ります。現社長は「売上さえあれば」という時代の価値観が当然と思い、時期社長は「利益を取れないなら規模など不要」と思う。ここのすり合わせはちゃんとなされているのでしょうか。日頃の業務の忙しさにかまけて、「お前、継ぐか?」くらいで終わらせてはいませんか?

 

事業継承はその後の何十年という人生を賭けるものです。何十時間でも、ときに何百時間でもかけて話し合うべきものです。しかし、そこまでしている会社はまずありません。皆無といっていいでしょう。人の心を大切にですとか、お客様第一主義などと掲げている看板は立派でも、人のことなどこれっぽっちも考えていないのが会社というものです。

 

これが完全に他人のお金による株式会社ならいいでしょう。キャスティングボードを握っているのは取締役会です。社内の人間がどうこうできるものではない。ですが、日本的な経営の現状からすると、こんな曖昧なままでは譲られる方が二の足を踏むのは当然です。譲りたい側の論理だけ一方的に押し付けられ、譲られる側のことがまったく語られない。それでは誰もが引き受けたくなくなるのは仕方ないことでしょう。

 

歴史の断絶、文化の断絶を乗り越えるのは、継承者に対してこれでもかと思うくらいに時間をかけることです。「会社は我が子のようなもの」であるならば、その手間隙は惜しまないはずです。自分の子どもの行く末を、「時間もったいないし」「面倒臭いから」などという理由で案じない親なんていないと信じます。

それでも手間隙をかけたくないなら、そんな会社は潰れるべきなのです。

児童虐待ならぬ、事業虐待。

あなたは本気で事業継承させたいと思っていますか?

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