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遅読家のための読書術|印南敦史

本読みを形づくる基本的なノウハウの体現集

読むだけで速読できる読書術なんてない

 

読書術の本はたくさん出ていますが、速読というのは基本的に読み飛ばしです。字を視界に入れるだけでは本の中身はわかりません。たとえ訓練しても、そう簡単に読めない本はあります。ですので、魔法のようにたちどころに読めるようになるということはありません。読み飛ばしというのは、知っている内容が出てきたときや、類推できる内容の場合に、話題の頭とお尻の部分だけを細かく見て、あとは文字を視界に入れるだけというもので、これは訓練次第で誰でもある程度できるようになります。

 

で、訓練というのはどうするか、ですが、本をたくさん読むことです。本を読んで得た知識や、執筆のルール、流れが染み付いていれば、このあたりはいらないな、ここらへんに重要なことが書いてあるはずだなとアタリがつけられるようになるのです。つまり、どうあがいたってしばらくは苦労しながら本を読むしかないんですね。まあ、当たり前です。ある日突然、世界一のサッカーチームのフォワードになれたりしないのと同様に、最初はできないものです。仮にあなたが天才だとしても、知らない国の知らない言語が話せない、読めないように、サッカーでも、本でも、はじめはヨチヨチ歩きになるのはしかたありません。そこは理解したうえで、この手の読書術を試されてはいかがかと思うのです。

 

もっとも、推理小説や学術書など、読み飛ばしたり、速読することが不適なものもありますから、どんな本でも超高速で読めるということにはなかなかならないと思いますけども、そういった嘘偽りない読書術の現状も本書はしっかり示しています。そのうえで、「読むのに時間がかかる本を1冊読むまでに、簡単に読める本を9冊読む」といったノウハウも授けます。これは本当に大切なことです。本好きと公言してはばからない人間だとしても、なにをいっているかさっぱりわからない本、なんども戻って読み直す必要があるような本にかかりきりになると、自分の頭の悪さに嫌気がさして億劫に思え、読書が嫌いになります。読書が嫌いになっても、知識欲や収集欲は治りませんから、結果として積ん読ばかり増えるんですね。もとより本など読みたくもないという人からすれば、読めない本は決定的な読書嫌いになります。子どもの学習意欲がゼロになるのは、いきなり難しいこと「だけ」させるからです。こんなくだらない本、読まなくてもよかったな……と思えるほど簡単な本からはじめて、成功体験を積むことです。1冊のややこしい本を読むために、9冊の簡単な本を読みましょう。読書サイクルを習慣づけるために、現状最短ルートかもしれません。

 

読み飛ばす箇所の見つけかた

 

読み飛ばすテクニックは色々と掲載されていますが、頭とお尻だけ読むといっても、どこが話題の頭でお尻なのか、重要な箇所はどこなのか全部チェックするのは大変です。なので、著者が実例をあげはじめたら読み飛ばしましょう。また、自分の成功体験、つまりは自分語りをはじめたら読み飛ばしましょう。私もブログでは自分語りをするように意識していますが、これは本と同じで紙幅を稼いだり、持論の正しさを示すための肉付けでしかありません。必要なのは脂身ではなく、滋味あふれる赤身、骨であるならば、その辺は無視して大丈夫なんです。「Aという問題をこう解決しました。この効果がこれこれです」と書かれた部分だけ読めばいいのです。こういった内容は頭とお尻に集中しますから、自分語りをはじめたら、そこは幕間の脂身だと即断して、サーっと目を通すようにしてしまえばいいんですね。

 

ここまで読めば、小説や専門書が読み飛ばせない理由がわかったかと存じます。同じことをすれば小説は登場人物の名前だけ見て、大団円なんてことになりますし、専門書は掲載されている操作や検討ひとつひとつが重要です。過程が大切な本は読み飛ばせないんですね。だから、速読なんてはじめから脇に置いておくべきで、読むのが遅いなんて悩む必要はまったくないのです。これらは遅読になるような本なのですから。9冊サッと読める本を読んだあと、面倒な本と向きあうくらいでいいのです。自信なくしちゃいますからね。

 

 

  

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