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自分探しの旅が大抵失敗する理由

自分探しやアイデンティティの確保は失敗する

幸せ探しは、不幸せへの入口

 

「あなたという人について説明してください」

「あなたはなにをするために生まれてきたのですか」

 

この質問に答えようとして、もがき苦しむ人がいます。そして、それこそが哲学的で、人間というものを真に考えている崇高な存在だと褒め称える向きまであります。では、早速試してみましょう。

 

あなたは上記の2つの質問に、自分がどういうものか、なにをするために生まれてきたか、思いつく限りに書いてください。また、読んだ人があなたのことを想像できるように丁寧に描写してください。自分を見つめ、アイデンティティを確立しようとしてきたのなら、少しくらいはできますよね?

 

まあ、90%の人はこの時点で「めんどくせ」って思って実行しないんです。「私は人間とはなにかを考えてきた」という自負を持っている人ですらやりません。つまり、誤魔化しだということです。自分の外観をよく見せるドレスやスーツのように、アイデンティティだの、哲学だのを持ち出しているに過ぎないのです。

 

当然、本気でないものの答えが見つかるわけもありません。

 

本気で取り組もうとしたら、はっきりいって、140字のツイートで説明できるようなものにはならないはずです。それこそ百科事典級になる。それでも足りないかもしれません。ということは、キャッチコピー的な短い言葉で表せる「自分らしさ」や「アイデンティティ」「天職」などというものは、ありえないということです。これは、言語の欠陥でもありますが、人間は頭が中途半端にいいために、複雑怪奇な現実を極めて単純なキャッチコピーでまとめられる(まとめないと理解できないし、落ち着かない)と思い込んでいるからです。

 

最近は漫画やアニメの主人公も深みのある人間性にされてきていますが、かつては「戦って勝つヒーロー」のような、すごくわかりやすい存在が中心でした。いまでも結局、万人に受け入れられているのはわかりやすい主人公像です。我々もまた同様に、「わかりやすいキャラクター」「確固たるアイデンティティ」「揺るぎない天職」といった、単純なものに憧れて、そちらを目指そうとしてしまうわけです。それが社会的にウケることを知っているからです。社会的にウケるということは、人間が本質的に求めているということであって、自分自身も悩みから解放され、いい気分になれると知っているからです。

 

でも、現実の人間は単純にはいきません。作者が用意した人格、困難、勝利のようなレールはなにひとつなく、どこまでも漂流し、風向きによってフラフラと揺蕩(ようとう)するようになっています。

 

これを受け入れられるかどうか、なのです。受け入れられない人は、補助器具を使います。上記のようなヒーロー像もそうですし、「神」や「仏」もそうでしょう。極めてシンプルで、圧倒的な存在を思い浮かべることで、寄る辺なき現実をどうにかしようとするのです。いずれにせよ、人間はシンプルな存在ではなく、絶対的力も持ちません。どこまでも不安ななかで生きるものです。それを拒否して、確固たる自分を求めても、達せられることなく、気が狂うばかりです。

 

自分探しの旅に替わるものとして

 

自分探しの旅は失敗に終わる。では、どうすれば人は幸せになるか。

答えは比較的簡単かもしれません。最近よく耳にする、「自己肯定感」を高めるだけでいいのです。

それも、極めて小さく、直近の目標だけ注視して、それを達成することで断続的に肯定し続けることです。

 

人間の根っこにあるのは、安心したいという緩んだきもちです。このきもちを持っている個体だけがリスクを回避して生き残ってきたのですから、遺伝的な限界なのかもしれません。群れるのもそうですし、他者を大切にするのも社会からの返報を願ってのことですし、自分とはなんぞや? と思うのも、頼れる答えを見出して安心したいからなんです。

 

日々安心するためには、大きすぎる目標を持ってはいけません。大きな目標は、達成までに時間がかかります。その間は不安であり続けなければなりません。一方、小さな目標なら数日周期で自分を肯定できます。持つなら小さな目標です。

 

「自分とはなんぞや」

というのは、そもそも問題として成立していません。焦点がぼやけている間違った問いに対して、ピントのあった解がでるわけがないのです。また、「世界から戦争をなくす」というのも問題としてモンダイです。大きすぎるのです。おそらく達成する前に挫折を繰り返し、自己肯定感が下がり続けるだけでしょう。

 

最終的に世界から戦争をなくしたいのだとしたら、いまやるべきは、目の前のケンカを止めることです。SNSで言い争っている両者をたしなめに行ってみてください。おそらく口汚く罵りあっている両者とも、ギョッとしますから。行動を変えるか、あなたに矛先が向くかはわかりません。でも、いますぐにやれることから手をつけなければ、いつまで経っても戦争はなくせません。

 

これと同じで、自分とはなんぞや? といいムチャクチャな質問に答えるには、自分ができることをひとつずつこなしながら見つけていくしかないのです。机にかじりついて哲学書を眺めたり、北海道の酪農家に弟子入りしている場合じゃありません。達成困難な目標を持ってしまうと、幸福の度合いが著しく低下することは、行動経済学からもわかっています。できそうなことをクリアし続けること。それが人生を良好な方向へ向かわせる方法論であり、ひいては大きな目標「自分探し」を達するための手段でもあるのです。

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