1. HOME
  2. ブログ
  3. マルチ・ポテンシャライト 好きなことを次々と仕事にして、一生食っていく方法 エミリー・ワプニック

マルチ・ポテンシャライト 好きなことを次々と仕事にして、一生食っていく方法 エミリー・ワプニック

マルチ・ポテンシャライト 好きなことを次々と仕事にして、一生食っていく方法

結論からいえば、色々手を出すことでしかしあわせになれない人間がいるのだから、あなたがそうならそうしなさい。ということになる。たくさんの才能や興味を持ち、それで成功している事例はたくさんあるし、分野横断型であるがゆえに価値を生み出すことは、1つの分野を延々とやり続けるより簡単かもしれない。

 

でも、この本は成功する確率(少なくとも食べていける程度に)を示してはくれないし、エキスパートやスペシャリストではなく、マルチ・ポテンシャライト(分野横断型のそれなりにできる人)がどれくらいの水準に達していれば大丈夫なのかも示さない。

 

これを聞けば、きっと読者はガックリすることと思う。そういう確率や可能性が知りたくて手に取るはずだからだ。TEDトーク550万回再生、36の言語に翻訳といわれても、結局は安定が欲しい、いまある足元をグズグズにしてまで、興味本位でマルチな世界へ飛び込むこともまた、1つの仕事にしがみついて飽きたまま朽ちていくのと同じくらいストレスなのだ。「Aも好きだけどBも」というマルチ人間がいるように、「Aも嫌だけどBも」という人間もいる。だから、本当に飛び石的に分野を横断しなければ生きていけない人間は、はじめからそうしていたりもする。

 

周囲がどんなに「1つの道を極めなさい」といっても聞かないだろう。そんな馬耳東風な人間になりきれない我々は、誰かの後押しが欲しくてこの本を手に取るのだろうけれども、著者は他人に人生の方向を示しはすれど、保証はしない。そういうビジネス書や自己啓発書は極めて稀なのだから仕方がない。

 

仮にエキスパートでないからこそやっていける仕事が見つかったとして、その商圏や商品が確立されれば、結局はその分野のエキスパートや周辺領域のスペシャリストが乗り込んでくる。これに対抗するほどの価値を提供できなければ、やっぱりただの器用貧乏で終わる。世界中のことわざや慣用句に「器用貧乏」や「二兎追う者一兎も得ず」に相当するものがあるのは、そういうことなのだ。

 

これは厳然たる事実だ。いくつもある分野を横断したり、混ぜ合わせたりしたいと思っても、それに魅力がないことは往々にしてある。そのとき、「あ、こりゃダメだ」と捨てられるかどうかだと思う。捨てられない人は「マルチ・ポテンシャライト」ではないのではないか。つまり、欲しいとか、すごいといってくれる人がいないものは、世の中への価値提供にはなっていない。もちろん、芸術などは死後に爆発的に価値が出ることもあるから、必ずそうだともいいきれないけれども、現状なっていなければ(生活面でも)どうしようもない。

 

そのとき、「これはもういいや」と切り捨てられるかということである。興味がたくさんあり、どんな分野にもすばやく順応する「マルチ・ポテンシャライト」というのは、ひとつのアイデアや分野にこだわったりしないはずで、「これしかないんだ!」と思った時点で、実は本質的にマルチ・ポテンシャライトではない、というわけ。

 

良識的な話題はここまでとして、もし、アイデアだろうが金銭的価値だろうが華々しいキャリアだろうが、安易に捨てされるほど好奇心が旺盛で、ひとつところに留まっていられない、正真正銘の「マルチ・ポテンシャライト」であるならば、こうしている場合ではないはずだ。いますぐ動き出さなければならないし、寝ている場合ではないと思っているはずではないか(できればリンクや参考図書から本やらを買ってからにしていただけるとありがたい)。

 

マルチ・ポテンシャライトとして生きるとすればどうする?

 

「歴史マニア」と聞いてあなたはなにを思い浮かべるだろうか。カビ臭く、埃にまみれた薄暗い部屋で、わけのわからない合戦資料や武将の馬具などを調べてニヤついている不気味な連中、といったところではないだろうか。

では、「トレッキング」と聞いたらどうか。山野を駆ける健康的な人という印象ではないか。

もしあなたがマルチ・ポテンシャライトで、このどちらにも興味があり、分野をある程度理解していたとしたら、もう、この瞬間、あなたが次にやるべきことは決まっている。

「歴史マニア」のための「トレッキング」グループ

を立ち上げるのだ。

 

本能寺の変の際に豊臣秀吉が成したという「中国大返し」を実践するだとか、島津軍が中央突破で逃げ帰った道を歩くだとか、山岳信仰の歴史を紐解くだとか。いくらでもある。水戸黄門のようにラーメンを食べながら南関東まで歩いてみる、でもいい。切り口次第で本当におもしろいサービスを提供するツーリズムや山岳アドバイザーになれるはずだ。

 

成功は保証されない。お客さんが取れるかはわからない。しかし、すでに歴史とスキューバダイビングを組み合わせたビジネスは実在するということだけは明確にしておく。やり方次第なのだ。

 

まとめ・参考図書

 

前半で徹底的に否定論を書き連ねたが、最後の数段を読んで「あ、やれそう」と思ったなら、残念ながらやってみる以外にそのモヤモヤを解決する手段はない。成功するか失敗するかも、やってみなければわからない。やるための準備はいくらか必要だろうが、完璧に準備をする前に誰かがはじめるか、寿命が尽きることは忘れてはいけない。

 

あと、付け加えるとすれば、ひとつのことに留まっていられない人間なのか、どんな環境に身をおいても「文句しかいわない奴」なのかは確かめておく必要があるのではなかろうか。どんなにひどい状況でもポジティブになれるライカー(Liker)と、どんなによくされても文句しかいわないヘイター(Hater)がこの世界にはいるという。そのどちらの要素も持っているのが人間だろうけれども、ヘイターの色味が濃ければ濃いほど、乗り移った先、例えば企業や組織、起業だったとしても、上手くいくわけがない。それはマルチ・ポテンシャライトのいう慣れてしまって飽きたのではなく、社会に働きかける力、つまるところ仕事力をそもそも欠いた人間ということだからだ。そういう人間は、あれこれやればやるほど、縮小再生産の罠にもハマるだろうから、スペシャリストを目指すほうが安全かもしれない。これもやってみなければわからないことではあるけれども。

 

ともかくまずは、自分がマルチ・ポテンシャライトか確かめるために本書を手にしてみてはいかがだろう。夢見がちに開くのではなく、現実を見据えて読めば、得るところは少なくないはずだ。

 

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


関連記事

調べものですか?

最新記事

おすすめ記事

特集記事

About Author