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改善と失敗の研究

どこを強化すればいいかすぐにわかるものなの?

見え透いた改善点はカイゼンに値しないかもしれない

 

戦闘機のパイロット育成というのは、とてつもない時間と経費がかかります。また、戦闘機自体も相当に高いため、命と機体はなるべく守りたい。そこで戦時中、研究者たちは被弾した戦闘機のデータを取って、損傷箇所を強化しませんでした

 

常識からすれば穴のあいた被弾箇所は装甲的に弱いのですから、十分に守ってやるべきと考えるところです。しかし、実態は逆です。

 

研究者が調べることができる戦闘機というのは、原則として撃墜されずに「帰ってこられた」戦闘機だけだからです。つまり、帰ってこられるだけの力を残していた、被弾している場所はバイタルパート(致命傷になる箇所)ではないということです。よって、強化すべきは被弾していない箇所なんです。一撃食らえばそれまでの箇所の装甲を厚くしたり、傾斜させたり、被害を分散させる技術を採用する。それが正しい対処法です。

 

いわれてみれば当たり前のようですが、これがなかなかできないものです。会社などでは特にそうでしょう。例えばAチームとBチームが社内にあったとして、どちらのほうが優秀か、新任上司のあなたにはわかりません。売り上げなどのデータもまだ手元に上がってきていない状態だったため、あなたは契約の失敗、遅刻件数、始末書といった失敗の報告件数で比較することにしました。すると、Aチームの方がBチームよりずっと多いことがわかりました。あなたはAチームを叱責し、Bチームを褒めます。

 

これが常識的な流れです。でも、数週間後に出てきた売り上げをみて、あなたは仰天することになります。圧倒的にAチームのほうが成績が上だったのです。失敗ばかりする無能集団のはずのAチームが、一体なぜ?

 

本当に悪いヤツは誰だ?!

 

別に落ちこぼれチームのサクセスストーリーではありません。指導の効果があったわけでもない。

理屈としてはこうです。

 

Aチームは、チーム内の信頼が高く結束力があったため、ささいなミスも報告できる文化があった。そのためにミスの報告件数が多くなったものの、大きな失策になる前に確認し、互いにカバーしあっていた。一方でBチームはそのような文化がなく、ミスを知られたくない一心で誰もがひた隠し、協力もしあわず、問題を大きくし、こじらせていたために営業成績も悪かったということなのです。

 

こういうところに気がつかない人、本当に多いんです。私もつい、上っ面だけで判断してしまいそうになりますし、実際にするでしょう。そしてAチームを叱責し、やる気を失わせ、チームを破壊してしまうのです。最悪の上司の誕生です。

 

失敗の研究や改善法の検討、応急処置というのは、思ったほど簡単ではないのです。目に見えていることがすべてではない、本当にそうだろうかと考え続ける必要があります。瞬時に判断するのが経営者や上司の仕事ではありますが、その計器に狂いがあれば、会社や組織は目的地には到達しないということを肝に銘じなければなりませんね。

 

        

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