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貴様いつまで女子でいるつもりだ問題 ジェーン・スー

女子という生涯消えない刺青

短評

これがなかなか難しいところで。自分は女子と思われたいけれども、女子じゃないことくらいわかっている。「ああ、もうだめだ。私は女子じゃない」と自覚した瞬間、大人になったといえるのかもしれません。そんな愛憎の対象である女子という存在について、おおよそ健全に生きていない著者が赤裸々に残すエッセイは、救いとなるか怒りとなるか。そんな随筆集です。

 

勝手知ったる自分のことのような内容ですから、忙しいかたでも、電車やバスの待ち時間にさらさら読めてしまいます。「ああ、マズイな」と感じはじめた女子のみなさん。ぜひご一読ください。

 

定義上の女子でなくなったなら、どうしようか

 

言葉の意味としての女子でなくなったいま、どう生きればいいか。特に悩むほどのことでもありませんが、「30代になったらば、それまでバカにしていたものをなにかはじめる」というのは賛成です。

 

細々とした消費をダラダラ続けるのをやめて、一点豪華主義をやってみるというのもいいでしょう。たぶん、すぐに飽きますが。

 

知らないこと、知っているふりをしていたことに触れるというのは、人生においてこのタイミング以外にないかもしれません。世の中を斜めから見るような、子どもを引きずった大人になるよりも、大人をこじらせた子どもになるほうがおもしろいと思うわけです。個人の価値観によりますが、ハイブランドの商品を買う、やたらいい家に住んでみるといった浪費行動や、行ってみたかった場所へ行ってみるというのもいいでしょう。知りたかったことを学ぶというのだっていいはずです。自身への投資もケチらない。半端はやらない。大人なのでね。子どもと違うお金と時間の使い方をして、そのうえで後悔するといいのです。これが大人をこじらせた子どものあるべき姿だと思うわけです。

 

こっそり、女が大人、男が子どもという固定概念が打ち壊されることを望む

 

「男子って子どもだよね〜」

 

といっていた女子が、年を重ね、そろそろいい加減にどうにかしろとなってから、慌てて「女子会」などと「自分は子どもだ」といいはじめる滑稽さ。男の私はとても現代的だなと思うわけです。

 

別に責めているわけじゃありません。なにかをしよう、はじめよう、楽しもうと思えば、斜に構えたり、達観していては「はじまらない」のです。いままで女性はそれでよかった。なにかをはじめることを厳に慎めと社会から圧をかけられるかわりに、なにもしないからこそ「大人」の立場を得ていたわけです。これって、結構大きなポイントですよ。

 

今日、冒険心、探究心、功名心に虚栄心……そういった心を解放できる時代になったことをよろこぶと同時に、「男子って子ども」といって過ごした過去に謝罪してまわらねばなるまいて、と思うのです。大人ぶれていた子ども時代を過ぎ、子どもぶらなければならない大人を生きる。さあ、ここからが一番苦しい時代です。存分に悔やみ、悩んで、行動してもらえれば幸いです。

 

女子の対義語である大人の女性という虚像

 

もとより完成された大人などというものはおりません。いるならぜひ連れてきて欲しい。世尊こと仏陀やイエスでも呼んでくるしかないでしょうか。とはいえ、逸話を聞けば結構とんでもないものもあるようですし、やはり大人などというものは幻想なんですよ。そんなものはいないのです。大人になりたいと思ってもがけばもがくほど、見苦しく、逆説的に大人ではないことを証明してしまうので、こればかりはどうにもなりません。

 

でも、それでいいわけです。先に述べたとおり、大人ぶればなにもはじまらないのです。別に法律や礼儀をかなぐり捨てて暴れ倒せとも申しませんが、体面ばかり気にしてなにもしなければ、世の中はちっとも変わっていかない。変える奴は子どもです。なにもしないのが大人、秩序や現状を維持するのが大人なのですから、子どもは必要(悪)なわけです。いい歳になったから大人になれなんて大間違いも甚だしい。大人になることは老いること、役立たずになること、そして死ぬことと同義です。これを許容して許される社会じゃないのはご存知の通り。大人になっても生産性や革新性を求められる時代です。ということは、大人になることなんてできやしないのです。

 

どうやら、世の中に大人なんてものはいないようです。せいぜい、大人になりたいものがいるだけで。

 

男子も女子も、墓の下に行けば骨です。そのときには「子」はもちろんのこと、性別だって自然に取れます。

享楽的に暮らせともいいませんが、過度な大人信奉はよして、性別の敵視もやめて、もっと拓けた人生を丁寧に生きられればいいなと本書を手にして思う次第です。

 

本書について

(徳島県・附家書店住吉店にて購入。以下ネット書店へのリンクです)

 

貴様いつまで女子でいるつもりだ問題 (幻冬舎文庫)

貴様いつまで女子でいるつもりだ問題 (幻冬舎文庫)

  • 作者:ジェーン・スー
  • 出版社:幻冬舎
  • 発売日: 2016-04-12
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